侵略者

12/21
前へ
/40ページ
次へ
「ゼロには、戦闘の形跡があります。そして、空から降ってきた。もしかしたら、未知の敵との戦闘があるかもしれません」  サハルが神妙な面もちで、自分を睨みつける2人を見据えると、3人の間には重苦しい空気が流れ始める。 「…………わ――」 「……ベルフェ……」  沈黙を破り、ベルフェが言葉を発しようとすると、抑揚の無い平淡な声が遮った。  若干、頭を抱えながら、ベルフェは声がした方を振り向いた。  そこには、腰まである綺麗な黒髪の少女が、闇のように暗い双眼でベルフェを見上げていた。  少女は白いワンピースの上から、ここの職員と同じ白衣を着ていた。 「なんだ? ユノア」  ユノアと呼ばれた少女は、自分の名前を呼ばれると、軽く手を上げた。 「……久しぶり……」 「落ち着いて下さい、王。ユノアはこういう性格でしょう」  先ほどよりも深く頭を抱えたベルフェに、シグレは声をかける。 「分かっている……分かっている……」 「……?……」  頭を抱え、必死に何かをこらえるベルフェを、ユノアは不思議な物を見るような目でベルフェを見上げる。 「王。ユノアの事は放っておいて、先ほど言いかけた事を」 「……ああ」  シグレに促され、ベルフェは顔を上げると話しはじめる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加