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「ここ……だと……」
ユノアを抱きしめたまま、シグレは声を震わせる。
「全員、呆けるな!!」
サハルが飛ばした怒声に、全員が正気に戻り体を強ばらせた。
「施設とゼロは今をもって放棄する!! 各自、データを持って退避しろ!! シグレ団長は、エルテリア殿下の安全を確保してください!!」
「貴様はどうするつもりだ!?」
ベルフェは床から立ち上がると声を張り上げた。
「私は少しやることがあります。ですが、死ぬつもりはありません」
サハルの笑顔を見て、ベルフェは唇を噛み締め、悔しそうに顔を俯かせる。
「シグレ団長! エルテリア殿下と……ユノアを頼みました!!」
サハルはシグレにそう言い放った後、ゼロの元へと駆け出した。
「……分かった。行きますよ、王」
感情を押し殺したかのように無表情で、シグレはベルフェとユノアを連れて行こうとする。
「……シグレ、王として命令する。ユノアを連れて退避しろ」
ベルフェはシグレの手を払いのけ、2人に背を向ける。
「……ふざけるな!! お前はこの国の王だろう!! 俺はお前の近衛騎士を纏め上げる団長だ!! お前を危険に曝せるわけが……!?」
腕を掴んで自分の方を振り向かせ、ベルフェの横顔を見た瞬間、シグレは喋る事が出来なかった。
ベルフェの瞳には、確かな意志の強さが現れ、シグレを見ていなかった。
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