侵略者

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 エルテリアと呼ばれる国の首都、そこにある城のテラスを青白く輝く月が、明るく照らし出す。  そのテラスに立つ1人の青年がいる。  月に照らし出された白銀の髪は神秘的な輝きを放ち、燃え上がる炎を連想させるような紅の瞳は、夜闇の先を見据え続ける。  顔立ちは整っており、気品の高さを感じ取らせる。 「風邪をお引きになられますよ? 王」  青年の後ろ――部屋の中から白い鎧を身にまとった青年が現れる。  夜の闇に溶け込むような黒髪に黒い瞳。顔立ちはこちらも整っており、爽やかさを感じ取らせる。  腰には、装飾が施された剣を一本、帯剣している。 「2人の時は、ベルフェと呼べと言ったはずだ。どうなんだ? シグレ」  ベルフェと名乗った青年は、シグレと呼んだ青年の方を振り向かずにそう言い放った。 「……そうもいかないだろ、ベルフェ。俺は近衛騎士団の団長なんだ。分かるだろう? ルーチカ・ベルファモーレ・エルテリア」  シグレにそう言われたベルフェは、苦虫を噛み潰したような顔をした。 「その名は好かんと言っただろう……」 「仕方ないだろう? お前はこの国の王だ。エルテリアの姓は、王の証だからな」  剣を揺らしながらシグレは、ベルフェの隣へと歩いていく。 「そうだが……やはり、な」  ベルフェはゆっくりと息を吐くと、夜空に輝く青白い月を見上げた。
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