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「……ふぅ……」
執務室で仕事をしていたベルフェは、手に持っていたペンを机の上に置き、休憩の意味を込めて息を吐く。
――コンコン――
執務室の中に乾いた木の扉を叩く、ノックの音が響き渡る。
「入れ」
ベルフェが促すと、木製の扉が重たそうな音を立てながら、ゆっくりと開かれた。
入ってきたのは、給仕服に身を包んだ女性だった。
腰まである栗色の髪に、海のように深い青色の瞳は、緊張と不安に揺れている。
顔立ちは、まだ少しだけ幼さが抜けず、大人というには少し心許ない。
女性の手にはトレイがあり、その上には食事が置かれている。
「し、失礼しましゅ、エルテリア様!! 御昼食をお持ち致しました!!」
緊張のせいなのか、女性は思いっきり噛んでしまった。
その様子を見たベルフェは、呆れたように苦笑している。
「し、失礼します」
女性は机の空いている場所に食事を置いていく。
食事を並べ終えると、女性は部屋の端の方に移動した。
「……オレが、怖いか?」
ベルフェは机に肘をつき、顔の前で手を組んで女性を見据える。
「こ、怖くないです!」
女性は力強く答え、ベルフェの目をジッと見つめる。
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