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(うぅ~……いきなりあの近さは反則だよぉう……)
ようやく思考が落ち着いてきたフェイミは、先ほどの執務室での出来事を思い返す。
(やっぱり、悪い印象を与えちゃったかなぁ……これでクビになっちゃったらどうしよう……)
廊下を歩くフェイミからは、よほど陰気な気配が溢れているのか、フェイミを少し敬遠してから通り過ぎる。
(でも、エルテリア様って、想像とずいぶん違ったなぁ。なんていうか、厳しい人かなぁって思ったら、意外と優しい人だったし)
無意識のうちになのか、フェイミの顔からは先ほどの落ち込みようが、まったく感じられない程に楽しそうに笑っている。
(でも、クビになったらもう会えないんだよね……)
感情の起伏が激しいのか、フェイミは再度肩を落とす。
(うあ~クビになりたくないよ~。でも、思いっきり失敗しちゃったしなぁ……)
「……はぁ……」
完全に意気消沈してしまったフェイミは、その場の空気が重くなるようなため息をつく。
そんなフェイミの進行方向から歩いてくる人影がある。
(あれは……近衛騎士団のシグレ・カミサカ団長だよね?)
フェイミは、自分の進行方向から歩いてくるシグレに道を開け、軽く頭を下げる。
「……頑張れよ……」
「え?」
すれ違いざまに確かにそう言わ、フェイミは下げていた頭を上げてシグレの背中を見つめる。
(どういう事だろう?)
シグレの意図が分からずに、今度はシグレの言葉についてフェイミは考え始めた。
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