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女性の顔と点滅する信号を交互に見ると、男は女性に背を向けて腰を低くした。
「おぶるよ。信号が変わってしまう。」
助けてもらったとはいえ、会ったばかりの男の行動に戸惑う女性。
だが、早く早くと急かされて、その背中に身を預けた。
男は人一人を背負っているとは思えない足取りで、やや駆け足に横断歩道を渡った。
渡り終わるのと入れ違いに信号が赤になった。
「ありがとうございます……」
「いや、気にしないで。ええと、ここからは一人でいける?」
ゆっくりと下ろされ、再度女性は礼を言った。
一歩後ろに離れ、心配げに聞く男に、少し足の傷が痛んだが、首を縦に振った。
「じゃあ、お大事に」
肩の力が抜けたように微笑んで男は立ち去り、女性も別の方角へ歩き出した。
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