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「ねぇ、こんなところにいたら風邪ひいちゃうよ。」
彼は無邪気に笑いながらそう言った。
あたしは何にも答えず上を見てみる。
そこには小さな傘があった。
その柄は目の前の男の子が握っている。
「ねぇ、なんでこんなところにいるの?」
男の子はあたしの顔を覗き込みながら言った。
「誰もあたしを必要としないから家を出てきたの。」
「じゃあ、僕のお家においでよ。」
あたしは俯きながら「ペットが勝手に逃げたら探しに来るでしょ。だからきっとあいつはあたしを連れ戻しに来る。」と彼に答えた。
「変なの、必要じゃないのに連れ戻しに来るの? じゃあさ、雨が止むまでおいでよ。」
あたしは顔をあげて彼の顔を見る。
そこにはさっきと変わらない笑顔があった。
「キミの髪は真っ白でとっても綺麗だね。ねぇキミの名前なんて言うの?」
「名前なんてないよ。あたしはいらないペットだもん。」
そう言うと彼はしばらく困った顔をした後 また無邪気な笑顔であたしに「じゃあ、僕がキミに名前をあげるよ。」と言った。
「そうだね、うん決めた。キミの名前は…………」
その日からただのモノであったあたしに命が生まれた。
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