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でも、大嫌いな気持ちは消えなかった。
私はその日、梓と帰宅途中に別れ話を切り出した。
「私、梓と別れる。」
「え?」
初めて見る呆けた顔から優しさは全て消え失せていた。
「だから、別れる。梓が同情して私と付き合ってる事はわかってるから。だから、別れよう。」
「何、誰かにそう言われた?」
「違う。自分で決めた事。」
「………………来い。」
グイッと力強く引っ張られ、歩き出す梓に小走りになる。足の長さと歩幅が全然違うものだから自然と私が小走りになるのだ。
「あず、梓!」
梓はなんの躊躇いもなしに豪邸の部類に入る大きめの家に鍵を開けて入るなり、私を玄関先で投げ付けるかのように突き飛ばした。
「いたっ」
足のスネを段差の部分にぶつけて倒れ込むと、その上から梓が覆いかぶさる。
「なんだっけ?別れようだっけ。」
見上げる梓の目に一切の光が入っていない。
パンッと左頬を叩かれ、呆然としていたら、胸倉を捕まれ、ガンッと床に背中を思いっ切りぶつける。
「や、やめっ…」
「別れて欲しいんだろ?小真、」
うっすらと涙の膜を目に張り付けて、梓の胸元を見る。
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