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そもそも、自分だって10年の間には色々あったのだ。
別れてから昨夜、再会したあの瞬間までに何があっても不思議はないし、気にしようとも思わない。
──ただ、そうやって下らないことを言いながら絡んでみたいだけ、なのだけれど。
「……腕、絡ますことないやん。あたしのこと、ずっと好きやってんから」
「お前なぁ……」
「マサが来たからや。あたしがクビになったん……」
雅也は黙って亜由子の様子を見ていた。
「来月の家賃や電気代、ガス代……どないしたらええん……」
そう、冗談ではない。
嫉妬したふりで、引っ張っている場合ではないのだ。
「……ヤバイんか?」
雅也が真剣な顔をして、顔を傾けた。
「……そら、ヤバイよ……青優社のバイト、そんなたくさん入ってたわけやないし、今から増やして貰っても、来月はヤバイ……」
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