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「幹君、め、眼鏡借りるね!!」
幹がかけている眼鏡を望は素早い動きでかけた。
そう、彼はとてつもないビビリである事は確かであるが、ビビリであるから弱いわけではなかった。何を隠そう、彼は、情報屋兼幹部であり、鬼畜大魔王と名高い黒沼高校の悪魔、三年の 桐山 隼人(キリヤ ハヤト)の幼なじみ兼愛玩具である。
今まで、ありとあらゆる危険な事をさせられ、この高校に望をいれさせたのも勿論隼人である。
つまり、望がこんな格下に負けるはずはなく、眼鏡で視界をぼやけさせて相手への恐怖心をなくせば、一瞬で勝負はつくのである。
「ふぇ~、み、幹君、だいじょぶですかぁ~?」
ふぇ~と情けない声を上げて幹を見る。
「うむ。」
「よ、よかった。」
気が抜けたのか、ふやふや~としゃがみけんだ。それを見ていた幹は、手に持っていたおはぎと望の顔を見て幹は、席を立ち、手に持っていたおはぎをそっと、望の手において、僅かに微笑んだ。
「えっ、えっ、ぼ、ぼくにー!ありがと、た、宝物にするよ!」
初めての友達からのプレゼントに頬を紅潮させ、興奮気味に望は叫んだ。
望は思った。
今までの、15年間のなかで1番嬉しい事だと。思えばこの15年間隼人兄ちゃんのせいで、一度も友達が出来たこともなく、遊びに行く約束をしているクラスメイトを見て何度羨ましいと思ったことか、思わず涙がこぼれ落ちそうである。
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