黒沼高校入学式

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「ハァハァ、き、君の名前は何て言うんだい?」 あぁ、妄想が止まらない。あの華奢で美しい少年を抱いてしまいたい。 「むっ、俺の名前か? 俺は幹という。」 「ハァハァ、そ、そうか、幹君と言うんだね、ハァハァ。」 あぁと、校長にそっけなく返事をして、イボ取りにせんねんする。 「えいっ!」 ぶちっ 「ギャーー!!」 「おっ、取れた。校長見ろ、頑張ったぞ。」 幹は校長の顔から取ったイボをみせた。 これはっ!? いきなり顔に激痛が走ったかと思えば、これはわたしの顔に付いていたイボじゃないか!! 「幹君!なんてことをするんだ!!人の顔に付いていたイボを取るなんて!!」 幹君はキョトンとした顔を向けている。 「ダメだったのか?取ったほうがいいと思ったんだが…。」 ……っ!? まさか!? 私の為にイボを取ってくれたというのか!? そして、イボのない私のほうがいいという遠回しの発言…… 「……すまない幹君、私は、君を疑ってしまった…許してくれ。」 幹の手を握り、目を見て話す。 「幹君!!私は決心したよ!一緒にがんばろう!二人の愛を育もう!!」 校長は声高々にいった。 「校長…それは無理だ。」 その言葉に愕然とする校長。 「ど、どうしてだい?」 「俺は既に愛を育んでいるからだ。」 ガーン 「そ、そんな……」 「むっ、何やらすまない。」 「いや、いいんだ……しかし、私の気持ちは変わらないよ……何かあったら私を頼ってほしい。私は校長だからね力にはなれると思うよ…」 悲しげな表情を浮かべ手を離す。 「もう、HRが始まるから教室いきなさい。」 「うむ」 そういって彼はさっていった。  あぁ…なんて短い春だったんだ、しかし私は彼の力になりたい。彼を支えよう。 ※愛とは、幹が飼っているペットの一匹である。
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