秋雨

2/2

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
           今日の天気は、雨でしょう。天気予報のお姉さんはそう言った。  昨日も雨だった。その前も雨だった。そのまた前も、雨だった。      もしかしたら世界は永遠と雨が降り続くんじゃないかな、本気でそう思った。  だとしたら、きっと川は氾濫するだろうな。  だとしたら、きっと暑い日はなくなるだろうな。  だとしたら、きっとカエルは喜んでゲコゲコ鳴くな。  だとしたら、きっとワインを作ってる人は悲しむな。    だとしたら、きっと僕はどうだろう。  雨は嫌なことを洗い流してくれるから、好きだ。そんな格好良いことが言えるような人なら、僕はきっと喜ぶだろうな。でもきっと、そういう人は悲しいことが多いんだろうな。僕はそんな人じゃないから、きっと雨に打たれてもそうは思わないだろう。      お天道様は、毎日考えて天気を操っているに違いない。  今日はうんと暑くしよう。  今日はたんと寒くしよう。  今日はざあざあと雨を降らそう。  今日はごうごうと風を吹かそう。    この前まで夏だったから、凄く暑かったから、雨を降らせて地球の体温を下げてあげよう。    だから、最近ずっと雨なんだな。そういうことに、違いない。  夏は気温が高いから、夏が終わったら雨を降らせて下げないといけないし、夏はみんなが一番頑張ろうと思う季節だから、それも冷ましてあげなくちゃいけないから。  いつも暑いと、いつか温度計の針を振り切ってしまうから。  だから、それを防ぐためにいつもより少しだけ長く雨を降らせるんじゃないかな。        雨が止んだらいつの間にか秋になっているんだろうな。  この雨は、夏と秋の境界線。四季という枠組みの中の夏と秋という季節の境目。この間に、季節が切り替わる準備をしなきゃいけない。  秋は冬の準備をしなきゃいけないから大変だ。だから、今のうちにその準備をしなさい、ってお天道様が言っているんだ。  おっかさんもおっとさんも、アリさんもキリギリスさんも、ゴンボもダイゴンも、雨に濡れながら秋の準備をしている。      僕も、夏とお別れして、秋をお出迎えする準備をしなければ。  さぁ急げ、秋はきっとすぐそこだぞ。        四角いハコの向こう側で、綺麗なお姉さんが言っていた。  明日は、晴れるでしょう。      
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加