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辺り一面に散らばっている絶望だとか、誰かが抱いている小さな希望。誰かの想いだとか、俺の想いだとか、さっきの男の想いだとか。誰かの諦念や誰かの不屈、誰かの不安や誰かの楽観、誰かの笑顔や誰かの涙。
世界を形作る全ての事柄の結晶として出来上がったラヴ・ソングを口ずさみながら、俺は悲しみを見た。
俺の小さな歌声は、俺の掠れた歌声は、真っ赤な空の真っ黒な雲に届くだろうか。
もう、大好きなギターを持つ腕は千切れてなくなってしまったけど。
果てない悲しみは生まれていくけれど。
そんな悲しみの間をすり抜けて、"ラヴ・ソング"が染みていく。
誰かの悲しみをそっと溶かして、誰かの心にそっと触れる。
悲しみの中に、そっとふっと差し込む。
届けばいいな──……、
"ラヴ・ソング"が聞こえる。
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