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白い猫と、黒い猫がいた。
白い猫は人々から大変可愛がられたが、非常に馬鹿だった。
黒い猫は人々から蔑まれてきたが、非常に頭が良く、聡かった。
白い猫は人々から餌を貰って、頭を撫でられた。
黒い猫は人々から石を投げられ、腹を蹴られた。
白い猫はなぜ自分たちが差別されているのかを知らなかった。だから、白い猫は毎日楽しそうに生きていた。
黒い猫はなぜ自分たちが差別されているのかを知っていた。それでも、黒い猫は毎日楽しそうに生きていた。
ある雨の日、人々から可愛がられていた白い猫は車に撥ねられて、コンクリートの上でペシャンコになった。
黒い猫はそれを見ていた。車は危ないものだと知っていたから、撥ねられずに済んだ。
黒い猫は悲しかったが、仕方ないことだと思ってまた歩き出した。雨が冷たかったが、本当に冷たいと思ったのはそれから先のことだった。
次の日から、黒い猫に投げつけられる石の量が増えた。
「なんで白い猫が死んだのに、おまえが生きているんだ」と何度も言われ、石を投げられた。
黒い猫はそれでもめげなかったが、「おまえが死ねば良かったのに」と言われた時は、さすがに少し心が冷たくなった。
ある日、黒い猫は頭からペンキをぶっかけられた。
それは黒い猫の綺麗な黒い毛を、汚い白に染めた。始め、黒い猫は自分がどうなっているのか分からなかった。
それをかけた人々は「やっぱりおまえは汚いなぁ」と言ってまた石を投げた。
次に雨が降るまで、ペンキは落ちなかった。雨が降っても、少し残った。
黒い猫は思った。
この毛が白かったら、自分も可愛がられるのだろうか、と。
黒い猫は首を振った。
首を振って、また歩き出した。黒い猫は聡かったので、気付いていた。
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