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  とりわけ強く不和を感じたのは、中学校のときだった。 入学したばかりの僕の手を引き、彼女は吹奏楽部への入部を勧めた。 彼女が入っている部活だ。 まあいいかな、そんな風に思って僕は入部した。 楽器はサックス。 それも彼女の勧めで、彼女も同じ楽器を演奏していた。 楽器の演奏はすぐに上達した。 最初は教えてくれる立場だった彼女に追いつき、演奏会では堂々と肩を並べていた。 演奏にはとてもやりがいを感じたし、何より、彼女と一緒に演奏できるのが僕は楽しいと自覚していた。 だけど、不和は消えなかった。 小学校ではあまり感じなかったが、中学校からは上下関係の意識が強まり、僕は彼女との学年の壁を強く感じるようになった。 彼女を先輩と呼び、敬って話すのがどうにもしっくりこないし、慣れない。 彼女が先輩だなんて、どうしても納得がいかなかった。 僕はわりかししっかりした性格で、一方の彼女はどこか頼りない。 互いの両親からは僕の方がお兄さんみたいだとよく言われた。 それに誕生日は1日違いだけど、実際には1時間と差がない上に、彼女は未熟児だった。 誕生日の日付が違う以外、僕と彼女に差はなかったのだ。  
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