第11章 氷の洞窟

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レベルの高さに、ただ戸惑う。 一瞬でも自分達が敵う相手ではないと思ってしまうと気持ちが保てないが、それも仕方のないことかもしれない。それだけの力が、対象からは感じられる。 「コイツ……俺達に敵う相手じゃないと思うぜ?レベルが」 「祐樹、前だ!」 見ると、キングキラーペンギンは体を滑らせ突撃してきていた。 祐樹の表情は一瞬にして青ざめる。話していて反応が遅れた為、そのまま物凄い勢いで後方に弾き飛ばされる。 衝撃と轟音。祐樹のHPバーが点滅し、その全てを喰らった。 悲鳴も出なければ、表情も変わらない。そのまま祐樹はバッタリと倒れ、動かなくなった。 全員我が目を疑い、しばらく棒立ち状態となった。 「なんてこった……初の戦闘不能だぞ。しかも、前衛の祐樹が!」 連夜の表情にも陰りが見える。反るように立ち尽くすキングキラーペンギンは、偏に巨大だ。洞窟自体が縦横約七メートルに対して五メートル弱という図体ともあって、余計に威圧感がある。 「こいつ!何か対処法はないんか?さっきから攻撃しても、全く効かへんで」 涼や連夜の遠距離攻撃は全てキングキラーペンギンの硬い皮膚に弾かれ、壁に当たり続けるだけだった。 その二人の攻撃もキングキラーペンギンにとっては挑発程度でしか無く、怒らせるのには十分だった。 そしていつしか見た、例のスキルモーションの姿勢に入る。 「うん?あの動作、前にも見た気がするで」 「まずいぞ涼!避けろ!」 敵の背後にとてつもなく大きなサークルが出現する。 連夜が苦虫を噛み潰したような表情をした後、ペンギンのサークルから大量のカジキが飛び出してきた。 津波のごとく押し寄せるカジキ軍団は、傍にいた涼をのみこんでいく。 カジキ達が消滅すると、そこには力尽きた涼が倒れていた。 「輝樹……これはマズイぞ」 「相当、な」
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