第11章 氷の洞窟

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二人は成す術もなく、しばらくキングキラーペンギンと睨み合っていた。 佇む巨体の大きなその目は、対象である二人をじっと見据える。目つきは、獲物の隙を狙うそれだった。 二人も負けじと睨み返し、少しでも攻撃を加えようと内心自棄になっていた。 「やるしかない!十字斬り」 輝樹は攻撃を仕掛けたが、相手はそれを待っていたかのように急に反応し、大きな手で輝樹を払いのけた。 輝樹は無傷だった。 が、この強大な相手の攻撃に何の被害も被らないという事はない。 相棒とも言える武器……双剣が輝樹の手を離れ、宙を舞いながら粉々になっていく。 破片と化した鉄の双剣は、こんな場所だと氷の粒かと錯覚してしまう。 この瞬間だった。どうにもならない……相手との絶対的な力の差を感じたのは。輝樹は言葉に出来ない絶望感に襲われ、この世界に来て以来初めて大きな不安に駆られた気がした。 傍に倒れる二人の仲間。 武器を失い戦えず、更に無防備になる自分。相手には掠り傷一つつけていないのだ。もう無理だと思った、その瞬間だった。 「輝樹!何だあれ?」 連夜の指差す方向は、キングキラーペンギンの頭上。 何やら淡い光が浮かび上がっており、あろうことか時間が経つにつれて二人の人間を形作っていく。 直後に閃光が走り、光の中から姿を現したのは赤い髪の女性と金髪の男性だった。二人はそのまま当然のように落下し、見事にキングキラーペンギンの頭部にぶち当たる。 「グエエ!」 その頭を半ば踏みつけるように、謎の二人は地面に滑り降りた。 「いたた……なんとか逃げられたみたい」 「ん?ペンギン共の親玉か。こいつ、怒っているみたいだぞ」 キングキラーペンギンは地団駄を踏み、怒り狂っている。洞窟全体が微かに揺れ、その力を強調している。 輝樹と連夜はというと、突然な二人の人間の登場で戸惑い、目を丸くしている。 「ちょっと待ってくれ!あんた達、誰だ?一体どっから……」
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