第11章 氷の洞窟

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「おっと。こりゃお取り込み中だったか。スマンスマン」 「でも、状況は芳しくないみたいだね」 キングキラーペンギンが今にも輝樹達の方に襲い掛かりそうだったので、聖也と紅が咄嗟に対応する。既に身構えており、地面を蹴る寸前だった。 「まあ、話は後でって事で!……行くぜ飛べないトリ!ドライブスラッシュ」 「とりあえず先に倒しちゃおう。ハードフレイム」 聖也は縦横無尽に駆け回る。 キングキラーペンギンを取り囲むように動きつつ、四方八方から攻め立てる。より速く、より強く。大剣を叩きつける度にエフェクトが激しく散り、一撃ごとに増す攻撃の重みを感じさせた。体力の続く限り、怒涛の連続斬激でどんどん斬りつけていく。 対する紅は巨大な炎の塊を召喚すると、片手を突き出してキングキラーペンギンに向けて放った。炎は空中で綺麗な渦を描き、対象に命中すると同時に大きな爆発音を炸裂させる。 大剣を用いた聖也の強烈な攻撃と、紅の華麗な上級魔法に輝樹と連夜は完全に魅せられ言葉を失った。 大被害を受けて暴れ回るキングキラーペンギンも忘れ、無言で突っ立って眺めているだけである。 気付けば、バトルは輝樹と連夜にとっては謎の人物である二人の完全勝利で終わっていた。 ほんの数秒の出来事で、輝樹と連夜は事態の解析に少々時間が掛かる事となる。 キングキラーペンギンは、既に光と化していた。 「ったく。偉そうに怒ってる割には大した事ねえっつーの」 二人の過激な演出は周囲一帯を焦土化させ、氷の壁をことごとく削っていた。 地面など、分厚い氷を抉って黒い足場を覗かせている。 余韻覚めぬ中、輝樹が第一声を切り出した。 「貴方達は?」 「え?……うーん。まずは、倒れている二人を復活させるね。精霊の福音」 紅は一瞬笑いのこもった困惑した表情になったが、直ぐに真剣な顔に戻る。 腕を交差させて詠唱を開始すると、紅の周りを数多の魔方陣が取り囲んでいく。 直後、全く動かない祐樹と涼の上に、光の衣が包み込むようにして現れた。 それは輝樹と連夜にも蘇生魔法だと分かり、倒れている二人の傷を次々と癒していく。 光が完全に消え去ると、二人はゆっくりと起き上がった。 HPも全回復しており、何事も無かったかのように歩いてくる。
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