第11章 氷の洞窟

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「ふう……どうなるかと思ったぜ。ケリはついたのか?」 「なんで助かったのかは分からへんけど、そこのお二方は誰や?」 笑顔で頷く紅と、腕組みをして安堵の息をつく聖也に、祐樹と涼は目をパチクリさせている。輝樹が頭をかきながら説明した。 「ああ、俺達を助けてくれたんだよ」 対して、紅は落ち着いた動作でゆっくりと前に出た。 「うん。自己紹介が遅れちゃったね。初めまして、私の名前は天音紅。こっちは弟の聖也。貴方達は?」 「桜井輝樹です。そして友達の連夜、祐樹、涼、リクです。危ない所をありがとうございました」 互いに会釈し、笑みを交わす。歴戦のプレイヤーを思わせる二人の出で立ちは、ある種の頼もしさを感じさせる。それは、この余裕すら窺える立ち振る舞いからも明らかだ。 皆が感心する中、一人祐樹は上の空となっていた。 「おい、祐樹。さっきから視線が紅さんに釘付けだよ」 「ハッ……別に、俺は洞窟を眺めていただけだぜ」 茶化す連夜と必死に誤魔化している祐樹だが、輝樹の制止によって呆気なく鎮圧された。 「続きだけど、私の職業はサラマンダー。炎属性魔法使いの中では最強の職業なんだ」 「俺はナイト。一応、剣使いの中では上位に入る職業だ」 レベルや職業など、それぞれのステータスで盛り上がる六人。 紅と聖也の一言一言に四人は驚き、何度驚愕の言葉を上げてもキリがない。 そんな和やかな空気で満ちている、休息の時間を全員で堪能しているときだった。 輝樹は見た。連夜の顔がなんとも言えない、歪んだ表情をしているのを。 「お前……なんて顔をしてるんだ」 「いや。みんな、SP見てみなよ。色々と気になる事があってさ」 連夜を含めた全員がSPを操作し始めた。 続けて、自称SP研究家の連夜が語り始める。 「よし……じゃあ、ちょっとそれらしく語るよ。まず、メニューだ。[ヘルプ]の欄が黄色く光っている。これは何かあるだろうから、後で確認してほしい。次に、[ランキング]。これは見てみたんだけど、初めに上位百名のサーバーの欄が『LOST』と出ている。つまり、消失だな。これは、目の前にルナロックサーバーの天音姉弟がいることから大体想像がつく……なんらかの原因で、サーバーが融合してしまったんだと思う。そして、一番気になるのが」 「七瀬さん、か」
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