第11章 氷の洞窟

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その場の空気は凍りつき、まるで洞窟と同化してしまったかのようだ。 しばらく誰も声を発する事もなく、ただSP画面を凝視しては俯いて黙りこくってしまっていた。 「何がどうなっているんや?一変して殺し合いゲームやな。弱い者から消えて行く……製作者は、意図的にこんな仕様に変更した感じやな」 「姉貴!七瀬が言っていた父親の計画って……まさか!」 紅は、黙ってコクリとうなずいた。 そして、顎に手を当て自身も重々しい口を開く。 「さすが聖也も鋭いね……確かに、ここまで変更点が挙げられていれば、計画の大まかな内容は大体予想がつく」 勘の鋭い天音姉弟の中では数秒で答えが弾き出されたようだが、輝樹達にはいまいち理解が出来なかった。 四人は首を傾げ、腕組みをして黙りこむばかりだ。それを察したであろう紅が、静かに切り出す。 「まず、二と三の内容を確認してみて。この仕様変更で、他プレイヤーをゲームから蹴落として順位を上げようとする人、他人のアイテムを強奪する人……少なからず出てくると思う。これによって、この世界の治安はどんどん乱れて行く。 いつかは、ギルドも対応しきれないような波乱の時代が訪れると思うの。サーバーを一つにまとめた事といい……この時点で、製作者が何を狙っているか想像がつかない?」 ここまで聞いて、輝樹達はハッとした。なぜ気が付かなかったんだろうと。 だが、そんな事を悔いている場合でも無い事を輝樹達四人も分かっていた。自分達が直面しているのは、それだけ深刻な問題なのだから。 「製作者が……七瀬さんの父親が狙っているのは……ゲーム世界の崩壊!?」 「そういうこと。しかも、それだけじゃない。本当に注目するべきは、四つ目の項目だと思う。二と三のような状態にしておいて、今になってなぜこんな重要なエリアをプレイヤー達の前にさらけ出すの?特に制御装置なんて……破壊されたら、どうなるかなんて誰にでも想像がつくよ」 輝樹達は身震いした。その頬を、冷や汗がつたう。洞窟内の温度とは別の意味で襲う寒気を前に、その話の先など考えたくもなかった。 「なんてこった……もう、俺達だけの問題じゃないぞ」 「ああ。こうなると、現実世界自体が掛かってくるよな。そして、この計画を止められるのは他でもない俺達プレイヤー自身だということ。今後は、その事をみんなで意識していく必要があるぜ」
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