第12章 決意

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メンバーにランキング上位の天音姉弟が加わった輝樹達は、冷たい空気で満ちている洞窟の道を歩きながら今後の方針について話し合っていた。 相も変わらず静けさを保つ幻想洞窟は、六人が歩きだしてからは少しだけ、輝きを増したような気がした。 「それで、俺達はいったい何をすればいいんでしょうか……?」 「うーん……まずは、洞窟から脱出しましょう。この道をこのまま進んでいけば、地上に上がれる通路に辿りつくから」 この世界のルールが大きく変わってしまったことにより、六人の足どりも自然と速まる。 今後は、七瀬親子の計画を一刻も早く阻止しなければならないというプレッシャーが常にまとわりつく事になるのだ。 輝樹達自身もどうにかしたいのは山々なのだが、紅や聖也のように戦えるかが不安でならない。 「さっきからやけに静かだな……ペンギン共どころか、猫の子一匹の気配も感じ取れないぜ」 「確かに妙ね。洞窟全体がもぬけのからになったみたい」 紅は首を傾げ、辺りを見回す。やはり、どう見ても普段の美しい洞窟だ。 「嵐の前の静けさ、じゃなきゃいいんだが」 普段とは違う雰囲気に、二人はなんとなく違和感を覚えた。 輝樹達も、先程までとなんら変わりない様子にしか思えなくとも、なんとなく嫌な予感はしていた。 「今の俺は……武器が無いから何も出来ない。こんな状態で敵なんて出たら」 「確かに、武器を扱う職業にとっては致命的だな。でも大丈夫だ。ここを抜ければ、大都市グレースが見えてくる。そこで、問題を解決する」 武器を失った輝樹にとって、今の状況は自分の身を自分で守る事が出来ないだけでなく、仲間の足を引っ張る事にもなりかねない。 どう考えても勝機の無い、巨大な相手に無謀にも立ち向かった自分に責任を感じていた。 剣を失いさえしなければ、仲間に気を使わせる事も無かっただろうと。 しばらく沈黙が続く。 薄く反射する鏡のような氷の地面を叩く足音だけが、常に響いている。 全員無言で通路を歩いているとき、突如異変は起こった。 あろうことか地面が揺れ、天上からは砂埃が落ちる。 全員の体は左右に偏り始め、バランス感覚が上手く機能しない状態となった。
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