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「なんや。地震かいな?」
全員が何事かと辺りを見回す。
これまで何食わぬ顔で進んできたが、その表情は段々と青ざめていく。
「マズイぞ……みんな走れ!」
揺れはだんだん強くなる。前と後ろを交互に見渡すと、氷の壁にヒビが入り、氷柱が天上を離れていく。それらは重力に従って落ちゆくと同時に、粉々になる。
聖也を先頭に、輝樹達は全力疾走した。
このまま立ち往生していれば、やがては崩壊するであろう洞窟に下敷きにされるからだ。
「ちくしょー!やっぱりこの世界おかしくなっちまったのかぁ」
風などない洞窟内をまるで風を切るかのように走っている最中、所々で大きな氷の塊が壁を離れ、轟音とともに崩れ落ちる。
今はもう複雑な地形と化した通路を、辛くもかい潜っていく。
聖也や祐樹は前衛で迫りくる氷塊を切り崩し、連夜と涼は後方からの射撃により突破口を開く。一同は少しずつだが、確実に進んでいった。
「うまく走れねえ!もう揺れが半端ないぞ」
「さっさと脱出しないとな。そろそろやばそうだ」
空気までもが振動し、全員の行く手を阻む。そんなとき、より一層巨大な氷塊が前列の祐樹を襲う。
「んな……!どけえ!」
祐樹は地面を蹴り上げ、高くジャンプする。
更に空中で体をひねらせ、回し蹴りで氷塊を粉々に砕いた。
立て続けに迫る障害物を蹴散らしながら進んでいくと、途中で分岐点にさしかかった。道は四つに分かれていて、道路の交差点のようになっている。
「ど、どっちなんだ!?」
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