第12章 決意

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「確かこっちだぜ……なんだありゃ?」 見ると、聖也が指さした方向とは別の道から怒涛のごとく押し寄せてくる黒い影が見える。近付くにつれて正体が露になってくると、輝樹達の苦手なキラーペンギンの群れが確認できた。 「げ……またあいつらかよ~!」 「この地震でパニック状態に陥っているみたいだね……みんな、先に行って!」 紅を除いた五人は言われるがままに出口方面に移動し、紅はちょうど分岐点の分かれ目に立ち塞がった。詠唱を始め、体内で魔力を練り上げる。 「いいのか?」 「姉貴なら大丈夫だ。すぐに追い付くだろうさ」 振り向きざまに紅の姿を目に捉え、つぶやく祐樹。 一瞬立ち止まりそうになったが、聖也の確信の眼差しを見て頷くと、踵を返して再び走り出した。 いくらか進んだだろうか。輝樹達の背後から強烈な爆発音が響き渡り、それは紅が魔法を放ったものだと分かった。 通路もろとも吹き飛ばしたような轟音とともに、キラーペンギン達の鳴き声は完全に消え去る。 「派手やなあ」 「まったくだな。これ以上敵が出てこなければいいけど」 しばらく走っていると、道が少しずつ上り坂になっていくのが分かった。 それは、地下から地上に近付いている事を意味する。 輝樹達にも、僅かに空気が変わってきているのが感じ取れた。 「もう少しだな。一気に行くぞ!」 「了解!」 最後に五人の前に立ち塞がった、おそらく崩れてきたのであろう巨大な一枚岩を祐樹が蹴り飛ばす。その破裂音はこれまでと違い、どこかに吸い込まれていくような響きだった。 そう、まるで洞窟の入口から内部に風が吹き込むように。 その瞬間、おもわず目を覆いたくなるような光が目の前から溢れ出した。
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