第12章 決意

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輝樹達が洞窟から飛び出すと、目の前には辺り一面に薄い青色をした雪が広がっていた。 雪山の反対側から入ってきたときと違い、空は快晴。陽の光を浴びて地面の雪が鏡のように輝き、それが美しさと眩しさを一層強める。 「う~ん、やっと出られたみたいだな」 「死ぬかと思ったわホンマに。あ、一回戦闘不能になったっけ」 洞窟へと振り向くと、その先から紅が走ってくるのが見える。 紅が脱出すると同時に、洞窟の入口が音を立てて崩れ落ち、崩壊した。岩で塞がれた状態となった出口を横目に、安堵のため息をつく。 小石がパラパラとこぼれ落ち、それと共に地震も収まったようだ。 「危なかったな」 「思ったよりも敵の数が多かったから、ちょっとね」 聖也が座り込んでいる紅の手をとり、立ち上がらせる。 「この事態で隠れていた奴も総勢で出てきたんですかね。とにかく、全員脱出できてよかった」 「ああ。さて、このまま北西へ進めば大都市グレースだ。ひとまずそこへ向かおう」 輝樹の武器以外は難を逃れ、全員が生還する事が出来た。六人が互いに無事を確認するかのように頷き合い、北へと歩みを進める。 輝樹達が歩き去った後、氷の洞窟の出口は雪で覆われたエリアにぽつんと静かに佇んでいた。 崩壊した洞窟はかつての美しさもないが、周囲の光り輝く雪原だけは生還した六人を見送るかのように、いつまでも光り輝いていた。
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