第12章 決意

11/19
前へ
/271ページ
次へ
その瞬間、ギルド長室の扉が勢いよく開いた。 何事かと振り返ると、一人の兵士が息を荒げて立っている。 「緊急事態です!ギルドの偵察部隊が、グレース草原の彼方に高レベルモンスターの大群を確認しました!真っ直ぐこちらに向かっているとの事です。 早急に兵を送り込みましたが……」 その場に居合わせた六人が、突然の出来事に唖然としている。耳に飛び込んできた兵士の言葉も、すぐには理解出来なかった。 カイルは焦りと不安の入り混じった表情をして、立ち上がる。 「戦況は?」 「偵察部隊、全滅です……敵は、数十万の大群との事です!」 カイルや六人の顔はみるみる内に青ざめていき、この状況にどんな対応が正しいのかも、簡単には見つけ出せずにいた。 「なんだと!他の地域はどうなっているんだ?」 「モンスターの気配、ゼロです。察するに、敵軍は総勢でこの街を襲撃するつもりです!」 強大な軍力を誇るモンスター大群の出現に、カイルは拳を握りしめ、顔を歪める。更に、その数秒後に廊下を走ってくる音が聞こえた。見ると兵士がもう一人、慌てた表情で現れた。 「報告します!モンスターの軍団を率いる謎の人物が存在するとの事です!その者は漆黒のコートをまとい、青い龍に乗っているようです」 「七瀬だ!」 「何だってえ!?やっぱり敵になっちまったのか」 先程まで通常の会話をしていた部屋は一変、慌ただしさと緊張の空気が支配する場となってしまった。 「く……至急、各街の本部に連絡して警戒を促せ!まだ時間はあるはず。グレース本部に、ギルドの全兵士を集めるんだ。各地のプレイヤーにも呼びかけろ。この街、そして地下のミストポリスが落とされたら、この世界は終わりだ!」 「承知しました!」 二人の兵士は、慌ただしく部屋を出て行った。 後には、静まり返った部屋に青ざめた表情をする七人が残された。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

378人が本棚に入れています
本棚に追加