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物凄い迫力に、立ち往生をきめそうになる。扉を押しあけて内部に入ってみると、その広さに比例して教会のような静けさを保っていた。
高さ五十メートル、奥行き百メートルはあるであろう。
内部構造はいたってシンプルだが、所々に工夫が見られる。石造りの床に赤いじゅうたんが敷かれ、壁には訳の分からない宝石のようなものが多数飾られていた。
天井には巨大なシャンデリアを三つ兼ね備え、それだけでも威圧感がある。一番奥の壁には大自然をモチーフにしたステンドグラスが貼られており、明るい日差しを取り入れて建物の中をより一層神秘的に仕上げていた。
そして、ちょうどステンドグラスの前。演説等で使う横長の机が置かれており、その前に白い衣を着た女性が立っていた。青色の長髪で、瞳は深い橙色。
その場にたった一人、何かを待っているかのように静かに佇んでいた。
おそらく転職教官であろう。分厚い本を手に、今しがた入ってきた輝樹達をじっと見据えていた。
「こちらへ来なさい」
奥行きも以外に距離があり、一歩一歩が長く感じられた。
恐縮です、と言わんばかりの引き腰で四人は前に進む。それを見た紅と聖也が苦笑しながら半ば呆れていたのは言うまでもない。
「来ましたね。まず貴方達の職業とレベルを確認します」
ようやく転職官の前に来た四人は、緊張気味で横一列に並んだ。
教官は手元の本を素早くめくり始め、各々のレベルと職業を言ってみせた。
「あの本に、プレイヤー全員の事が書かれてんのかな?さすがにそれはないよな」
「知らねー……まあ、ゲームの世界だし、ありなんじゃない」
小声でささやき合う輝樹と連夜だったが、すぐに教官の一睨みで黙りこくった。
これ以上下手な事を言おうものなら、即転職拒否されそうだ。
「全員の転職ポイントが、必要値に満たっている事を確認しました。今すぐに転職しますか?」
その一言に、紅と聖也を含む全員が安堵のため息をつき、首を縦にふる。
それを確認した転職教官は、目を閉じて何かをつぶやき始めた。
「現在職業。桜井輝樹[双剣使い]、夢見連夜[冒険家]、森宮祐樹[武道家]、御波涼[銃使い]……これより上位職への転職を執り行います。むにゃむにゃ」
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