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「…」
ふと、その言葉につられ顔を上げると雨が降っている
ネズミ色の雲
耳障りな激しい雨
脚にまとわりつくドロドロになった土
顔にはりつく髪
そしてその背景に不恰好な真っ赤な赤
「何者かと聞いている 答えよ」
眉間にシワを寄せ何かを迷ってる そんな顔をして見てる。 私を
私、私を見てるんだ
でも私、私が何者かなんてわからないよ
あれ、なんでわかならいんだろう。
なんで…
「何者かと聞いているのだ!」
この人怒ってる でもなんで悲しい顔してるんだろ
あ、私に刃物…槍が向けられてる
この人が私じゃない私を殺すんだ。
「最後の問いだ お主は何者だ」
私じゃない私なんだからいっそのこと…
「……し…」
声がでない
「こ……て」
男の人が目を少し大きくして
「聞こえぬ もう一度言え」
涙が流れてきた
「…殺して」
私じゃない私が死にたくなんかないと叫んでるように
光が無い虚ろな瞳に
濁った雨粒に栄える光輝く涙が
何粒も零れ落ちた
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