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「………」
正直言って、どうやって入れば良いのか分からなかった。いきなりあなたの傘ですなんて言っても信じられないだろうし…
「ん……!」
「!!」
私がご主人の家で立ち止まっていると、ご主人が中から出てきた。私とご主人は目を合わせると、お互いに固まってしまった。
「君…その傘は…」
「こ…これは私の傘」
「そうか…すまないな、自分が持っていた傘と似ていたからつい、ね…」
ご主人は私の傘を見て自分のではないかと思っていたって事は…やっぱり私の事を探していたんだ…
「でも…それと同時に、これはあなたの傘でもあります」
「それはどういう事かな?」
私は、ご主人にありのままを話す事にした。
「私は元々、あなたの傘でした。あの日、あなたが私を置いて帰ってしまった夜に、私は別の人間に勝手に持ち出されました」
「そうか…やっぱりあの時に…」
ご主人は恐らく、私が持ち出された後に店に戻ってきた。その表情ですぐに分かった。
「その後、私はその心ない人間に捨てられて、長い間ゴミの山に居ました。たまに台風などで飛ばされたりもしました…」
「……」
ご主人は私の話を聞いている内に俯いてしまった。あの日の事を悔やんでいるのだろうか。それでも、私はご主人に今までの事を知ってほしかったから、話を続けた。
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