からかさお化け

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「私はそこで、たくさんの心ない人間達を見てきました。物を平気で捨て、理不尽に壊す、そんな人間達を」 「俺もその心ない人間達の一人だな…」 ご主人…ご主人は、違う。ご主人は私の事を今の今までずっと探してくれた、私はあなたを責めに来た訳じゃない。私はただ… 「いえ…あなたは違います!」 「…!?」 「あなたは…今までずっと私の事を探してくれた…私を忘れはしなかった!」 私はご主人に自分の気持ちをぶつけた。 「私は…私はただ、あなたに…ご主人にお礼を言いたかった!だから、この姿になって、ここに来たんです。この姿になったのは心ない人間達を懲らしめるためでもありますが…」 「そうか、君はそのためにここへ…優しいね」 優しい、また言われた。 「あの…優しいとは…」 「だって君は仲間想いじゃないか。同じ物だったからこそ、人間達を懲らしめようと思えたんだろう?」 ああ、そうか…優しいって言われた意味がようやく分かった。私は、仲間に対して優しいんだ… 「…はい!」 「ただ、どうして俺にお礼なんて言いたいんだ?俺は君を置き去りにした挙句、妖怪にまでしてしまったんだ」 「それは…今まで、私を使ってくれた事に対してと、お別れを言うためです」 私はご主人に私の最初で最後のあなたへの感謝の気持ちを伝えた。 「今まで、私を大切に使って下さってありがとうございます。それから…妖怪になってしまってはもう、あなたと一緒にいる事は難しいでしょう。だから…さようなら、私の大好きなご主人…」 「…!」 私は感謝の気持ちを全部ご主人に伝えきった後、涙が溢れてきた。止める事が出来なかった。
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