からかさお化け

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「…こっちこそ、今まで俺を雨から守ってくれてありがとう」 「…ご主人……!!」 やっぱり、離れるのは嫌だった。でも、今の私が一緒に居るとかえってご主人に迷惑がかかってしまう。 「泣かないで、でないと…俺も別れたくなくなるからさ…」 「うぅ……」 「良い子だね。じゃあ、最後に俺から君に贈り物をあげよう」 「贈り物…?」 ご主人からの最初で最後の贈り物…一体何だろう… 「君、裸足だろう?だから俺の下駄をあげるよ。…不満かな?」 「…いえ、そんな事…ないです!!」 ご主人から、ご主人愛用の下駄を貰った…こんなに嬉しい事はない。私は嬉しさのあまり、また泣き出してしまった。 「ははは…まるで一本鑪みたいだね」 「一本鑪…?」 「傘が妖怪になった奴の名前さ。今の君がそうさ」 一本鑪… 「ご主人…今日から私の名前は一本鑪から名前を取って、多々良小傘として生きていきます」 「多々良小傘…うん、良い名前だ」 褒めて貰えた…嬉しいな。 「ご主人、私は人を驚かせて、その時の心を食べる妖怪です。私は今から、最初で最後のあなたの心を食べたいと思います」 「…うん」 ご主人は私に心を食べさせてくれる事を許してくれた。私はご主人を驚かせ、最初で最後のご主人の心を食べるために、ある行動へと出た。 「ご主人…ありがとうございます」 「!!」 私はご主人にお礼を言い、ご主人の口へと接吻をかわした。ご主人は相当驚いていた。ご主人の心が、私の中へと入ってくる。とても美味しく、同時に切なかった。私はそれに耐え切れず、涙が溢れ出てきた。 「どうでしたか…私の驚かし方は」 「うん…びっくりしたよ」 「えへへ…それじゃご主人、お元気で…」 「君も…小傘も元気でね」 私とご主人はお互いに別れを告げ、それぞれの道へと歩き出した。さぁ、次は心ない人間達を驚かして仲間達の仇を討つ番だ! Fin.
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