置き去りにされた傘

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今日は雨が降っている。だからご主人と一緒にお出かけが出来る。 私はただの唐笠だけど、誰かに使われるのが嬉しい。他の傘や、道具達もきっとそう思っていると思う。 今日は何処に行くのかな。私には話す事も出来なければ、動く事も出来ない。だけど、ご主人が行く場所は気になる。傘がそんな事思うのはおかしい事だけれど、心位、あったって良いんじゃないかな? 今日は何処かのお店に来たみたい。私は畳まれて傘立てに入れられる。これは仕方のない事、だから慣れている。ここで待っていれば、必ずあの人はまた私を手に取ってくれるから… 突然、雨が止んだ。あれだけ土砂降りだったのが嘘のように快晴に変わっている。帰りは差される事なく元の場所に返されるのかと思うと、ちょっとだけ複雑。
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