置き去りにされた傘

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「ふう、助かったぁ」 私は助かってないんだけど…一秒でも早く元の場所に返してほしいよ。 「しかし、この傘大分ボロボロになってるな」 悪かったですね、ボロボロで。でもボロボロって事はきっとご主人が大切に使ってくれている証拠…だよね? 「まあ、こんな傘もういらないと思って置いていったのかねぇ、この傘の持ち主は」 …えっ?ご主人が…私の事を…いや、そんな事あるはずない!ご主人はきっと今頃私を探してくれているに違いない! 「俺が代わりに捨てておくか」 …捨てる!?この人…なんて心がないんだ! 「近くにゴミ捨て場があったな…良し、そこにするか」 いや…辞めて!お願いだから私を捨てないで!元の場所に返して!ご主人が探しているから! 「今日は助かったが、悪いな」 そう思っているなら…私をこんな場所に置いていかないで…ねえ、頼むから私を元の場所に返して… 私の願いは届くはずもなく、その人間は元の居場所へと帰っていってしまった。このままじゃ…もうご主人の元に帰れないよ…
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