置き去りにされた傘

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私はもう…ずっとこのままなのかな…ご主人… 私は途方に暮れていると、微かに足音が聞こえてきた。もしかしたら… 「よいしょっと」 違った…あの人間と同じく、ゴミを捨てにきた別の人間だった。唯一あの人間と違うのは、もう本当に使えなくなってしまったと言っていい物ばかりを捨てている。この物達はきっと、最後まで使ってもらえて幸せだったんだろうな… ご主人…今頃何をしているのかな?私を探してくれているのかな、それとも… 私はご主人が私の事を探してくれていると信じ、ただひたすら待った。でも、来ない。来るはずがない。こんな場所に私があるとは思っていないのだから。 私が捨てられてから、大分月日が流れたと思う。毎日心ない人間が使いきってない傘や道具を捨てに来る。もちろん、全員が全員そうではなかった。 ご主人を待つ中、季節は夏なった。その夏の日に、私がこの世で最も恐いと思っていたそれがやってきた。 …台風だ。私は暴風の中、どうする事も出来ず、ゴミ捨て場をコロコロと転がっていた。そして急に身体がふわり。私は台風によって、また場所を移動させられてしまった。
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