置き去りにされた傘

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そこからまたしばらくはその場所で来るはずのないご主人を待っていた。毎日毎日ゴミは増えていくばかりで減らない。減っても困る気がするけど… どうして人間はこうも勝手なんだろう。平気で物を捨てるし、放置するし…人間は皆こうなのかな… そう思うと、ご主人も同類なのかなと感じてしまう。でも私の知る限りご主人はこんな事はしない。使える物は大事にしてくれる。それは今まで私がご主人の元にあったからこそ分かる。 このままご主人に会えないのなら、せめてご主人にお礼を言いたかった。傘だから喋る事なんて出来ないけど、私のこの気持ちを伝えたかった。 「うわ、何だこのゴミの山」 また今日も誰か来た。でも、いつもと様子が違う。 「…捨てるならちゃんと邪魔にならないように捨てろっていうの」 あの人間、何かぶつぶつ言ってこっちに向かってきた。そして…捨てられていた物を容赦なく投げて塞がっていた道を開けた。何も投げなくてもいいのに… 私は投げられた物を見ると、それは明らかに壊れていた。確か投げられる前はまだ使えそうだったのに…人間は捨てた上に、理不尽に物を壊すのか… 私はそう思うと、腹が立った。自分達が勝手に作って、勝手に捨て、勝手に壊す。そんな事する位なら作られなかった方がマシだ。私はご主人に会いたい気持ちよりも、私達を捨てた人間達を懲らしめたいという気持ちの方が次第に強くなっていった。 そして、それは突然に起こった。
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