からかさお化け

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また今日も物が捨てられるのをじっと見ているだけ事しか出来ないのか…そう思った時だった。 「…………」 …あれ?何か…目線が高いような…あれ? 「………あ…」 …喋れる…?もしかして、私… 「人間に…なった?…」 いや、傘が人間になるのはありえないからこの場合、妖怪になったと言うのが正解かな? 「とりあえず…」 私は立ち上がる。がしかし… 「うわっとと!」 …こけた。慣れない身体だし、動いた事なんてなかったから当然の結果だ。でも、近くにあった傘を杖代わりにして私は何とか立ち上がった。それにしてもこの傘、私が傘だった頃の姿に良く似てる…目と口なんてなかったけど。 「今なら良く見える…この捨てられた物達が…」 私はその目で初めて、捨てられた物達を見た。私は近くにあったまだ使えそうだけど、明らかに意図的にボロボロにされたと分かる傘を手に取った。 「あなた…可哀相…」 私は傘に向かってそう呟いた。前は同じ傘だったが、決して傘の心が分かる訳ではなかった。でも、なんとなく分かる。私はゴミの山を見回した。 「あなた達…皆人間達に裏切られたんだね…」 ゴミの山から、今にも人間達に対する物達の悲痛な叫びが聴こえてきそうだった。私はこの物達が人間達に裏切られたのだと思うと、何故か涙が出てきた。
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