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 目に映る景色は装飾の施された美しい城と荒廃しきった大地。放たれた魔術が彼を掠った。   緑の森と深い青の海が広がる楽園がかつてそこにはあった筈なのに。今あるのは腐敗した世界だった。   嗚呼、と嘆息し彼は目を閉じる。このまま消えてしまっても構わないと思った。  ――私は魂を落としたのです。   不意に声を聞いた気がした。何一つ映さない暗闇の中で、かつての記憶の欠片にも似た声を。  探さなくては。  でも、何を探せばいいのだろうか。    青年は目を閉じる。    失われた彼女の欠片を探さなくては。    最後の力を振り絞って、彼は世界の狭間を抜けた。零れ落ちていく砂のようにさらさらとなにかが失われていく。外れない枷が、ぎちぎちと青年の腕に食い込んだ。    翼をもがれ、地に堕ちた自分は永久に空に焦がれるしかない。朦朧とする意識の中で伸ばした手は何も掴まなかった。    姫様。姫様。姫様。  たった一人の、姫。  強く閉じた目は、冷えた体は冷たい雫に濡れていく 彼はぼんやりと、自らの消滅を思った。 地面に落ちた紫紺の羽は、彼の涙だったのかもしれない。  
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