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自分の額に冷たい布が当たる感覚で目が覚めた。
「起きましたか」
そこに居たのは一人の少女だった。白く華奢な身体に、黒く澄んだ目が際立つ。左頬を覆うガーゼは痛々しく、酷く不釣り合いだった。
「あんたは」
「貴方が道で倒れていたので、拾っただけの人間です」
「……」
「魘されてました。大丈夫ですか」
「多分」
その言葉に彼女は唇の端を上げて安心したように微笑んだ。青年はその表情に目を丸くする。記憶の端にある表情に酷く似ていた。
その誰かを思い出そうと考え込む。
刹那、酷い頭痛が襲って頭を押さえた。
「大丈夫ですか? どうしました?」
心配そうに顔を歪めた少女がゆっくりと手に触れる。手の冷たさに何故か痛みがふっと和らぐのを感じた。
「大丈夫」
「それならいいんですけど……。天使さんはお名前、何というのですか」
「天使?」
少女は数回口を動かすと困ったような笑みを浮かべて呟く。
「貴方、天使のように綺麗な人だから」
その言葉に笑いだしそうになって彼は唇を歪ませた。笑い方が、分からなかった。
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