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閉鎖的な町は時代に残されたように静かであった。
こんな町だから信司は野球に集中することができ、好きになったのだ。よって信司はいじめに耐えた。野球部を辞めればいじめから離れることができるが、野球は一人でできるスポーツではない、信司は野球ができなくなることが怖かった。しかし信司もいじめを大人しくやられるのは好きではない、何度かやり返してやろうと思ったりしたがそんな事をすれば暴力沙汰を起こしたとしてせっかく自分を認めてもらった証の推薦を取り下げられてしまうだろう。それは嫌だった。こんな小さな町でやっと手に入れた自分の証を無くしては未来を失ってしまうと同じである。たかが野球と言ってしまえるが、信司にはしかつ問題なのである。
そしていじめが終了した。それと同時に部活も終了時間を迎えた。部活の終了時間と言うのは明確な時刻は決まっていない、空が暗くなったらみんな帰るのでそれが終了の合図となっている。これを言い方を変えて表現すると、信司は学校が終わってから暗くなるまで言葉と暴力で攻められ続けられたと言うことだ。殴られ蹴られ、痛みがあるのは蹴られた足だけではなかった。気づけば体中が痛い、今日は一段とひどくやられたようだ。
皆が帰った後、あたりは夕暮れで真っ赤に染まっていて後30分もしないうちに真っ暗になってしまうだろう。信司はバットを袋に入れよっこらせと立ち上がった。
部活の帰りはいつも信司の心は冷め切っていた。いちいちあれに心を動かしていたんではいつか我慢できなくなってしまう。そうならないよう心を閉ざす事にした。しかし信司の心は限界にたっしていた。自身もそれに気づいていた、だから心を閉ざす、もう何も入れないよう蓋を閉じるように・・・
信司は川に沿う道を歩いて家路を歩いた。家に帰るにはこの道が一番の近道であるのだがこの道を利用する者は居ない。
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