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「またやられたんか、ガキ」
何故ならここにはホームレスの男が寝床にしているからであった。
突然草むらから発せられた声、信司が顔を向けると草の上にダンボールを敷いて座りぼろぼろの服を着た男がにやにやとしていた。
この男は3年前ほどにこの町にやってき、どこから来たのか、名前も分からない謎の者で、農作物を勝手に食い荒らし、ごみを漁っては町民に暴力を振るうという好き勝手をやっており、この町でこの男を知らない者はおらず、好いている者も当然居ない。信司はたまにこの道を通るのだが、この男はいつもここから野球部の練習を見ているらしく、信司のいじめられているのも見ているらしい。よってこの男は信司を見つける度に声を掛けてくるのだ。
「やられたらやりかえせいや、男じゃろうが」
いつもどうり男を無視して歩き始めた。今日は疲れて、いつもより機嫌が悪いんだ。相手をしている余裕はない…
「そもそもだな、あんな"玉遊び"を毎日やるなら…」
男の言葉が、"心に入ってきて"しまった……
そこから信司には男の声が聞こえなかった。心はもう理性で抑える事が不可能な状態だ。
この男は自分が必死になっている野球を馬鹿にしやがった。別に謝らせる気はない、しかし"だ"!別に無視を続ける気もない!
ただ一つ、信司はただ一つだけ行動するために肩に下げている長細い袋からバットを取り出した。右手にバットを握り絞め、一歩男に近づいた。男はまだ喋っているが、信司の持っている"物"には気づいていないようだ。もう辺りが暗いからだろう……
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