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まずは遺体をどこかに移動させようと男の遺体を見た。
大丈夫,もう見慣れたと自身に思い込ませ,男の腕を持って引きずるようにして川の横にある背の高い草むらまで運んだ。運の良い事に大きなブルーシートとダンボールが捨ててある,あれを使わせて貰おう。
今日はもう遅い,辺りが暗く人が居ないとしても長居はしない方が良いだろう。
遺体にブルーシートを被せ,更にダンボールを被せて錘として大きな石を乗せて置いた。すぐ脇には川があるため臭いは多少流せれて行くだろう。
今日はこれで良い・・・明日は野良犬対策をしに来よう,遺体を食い散らされては誰かに見つかってしまう恐れがある。
ズボンに付いた草や土を払い,信司は辺りに人の居ない事を再確認し,家路を歩いた。
「ただいま・・・」
家に入ると玄関で母親が待っていた。いつもより帰りが少しばかり遅かったせいだろう。
母は信司の帰宅を確認してほっとする間もなく,顔を真っ青にした。
「どうしたの!その血!」
信司は自分の衣服を見下ろしてし,まったと失点を確認した。
暗くて気づかなかったが,衣服には男の返り血がべったりと染み付いていたのだ。特に酷いのは足元である。裾は真っ赤に染まっている。信司の中学校の野球部の練習着は青と白を貴重としており、爽やかな印象を意識させるように作られている。よって真っ赤な血など付着していれば目立たないわけが無い。
「どこを怪我したの!見せて?」
母は焦り、一番血の跡の酷い足元の裾を捲ろうとしている。
まずい・・・。裾を捲り怪我が無い事を確認されればこの血がどこで付いたのか聞いて来るだろう。
・・・・・・駄目だ。言い訳が思いつかない。こんなに大量の血がどこで付くのかとてもじゃないが言えるわけが無い。最悪の手段として,
”この女の口封じを行うしかない”
女が中腰となって裾を捲った。
女の後頭部が無防備に晒され,バットにそっと手を運び,
「どうしたの!足が腫れて血が出てるわよ!」
ピタリと手を止めた。
母の声ではっと意識がはっきりとした。
自分はいったい今何をしようとしていたのだろう?
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