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この日,信司は静かに眠る事ができなっかった。殺人を犯した後とは思えない心理状態で信司は数時間も人を殺した瞬間を思い出していた。
信司の心はもはや常人からズレて行っていた。そして本人もそれを自覚する事ができず、だれもそれに気づく事が出来なかった。
こうして信司の心は誰にも知れず,ゆっくりと壊れていった。
信司が殺人を犯してから10日程過ぎた頃,信司の生活には特に変化は訪れていなかった。あると言えば一つ,信司の足の容態は意外と酷いものであり骨に罅が入っていた。強制的に足にギブスをはめる事を余儀なくされ,ここ最近はずっと松葉杖生活を送っていたのである。
学校には転んで怪我をしたと報告しており,部活には参加していない。信司に怪我を負わせた少年達は信司にいつ少年達が本当は怪我を負わせたと言われるのか恐ろしいのか,最近では信司へのイジメは無くなってきている。
今日もいつも通り登校し,階段の昇降に奮闘していた。片足の生活と言うのは大変疲れる。怪我をした足を庇って片足で生活するため,足腰への負担が激しく,足を庇い姿勢が悪くなるために足とは関係のなさそうな他の筋肉まで痛めてしまうのだ。
「鞄,持ったげるよ?」
信司が階段を昇っていると,後ろからクラスメイトの女の子が声を掛けて来た。
彼女は信司がギブスをはめて登校した日から甲斐甲斐しく信司の付き添いをしてくれているのだ。整った顔立ちして,優しそうな目とか綺麗な黒髪やこの甲斐性のある性格を考えると良い看護婦になるんだろうなといつも思う。
「ありがとう,いつも助かるよ」
少女はにっこりと笑うと信司から鞄を受け取り,信司の階段を昇るペースに合わせてゆっくりと階段を昇り始めた。
「私ね,今日の星座占いが一位だったんだよ!何か良い事がありそうだな~」
「へー,一位か。ちなみに僕は牡羊座なんだけど何位か覚えてる?」
「ええと,確か最下位だったよ」
「まいったな,一位とビリじゃ話にもならないじゃないか」
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