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してやったりと、ニンマリ笑う松左衛門の目に涙など無い。
梛之介は沢山の涙を溜めたまま、目を見開いた。
「じっちゃん…オレをダマしたのか……!?」
呆気に取られた梛之介は、鼻水まで垂らしそうな寸前だ。
「騙されるお前が悪いんじゃ」
どこか楽しそうな口調だ。
「ひでぇぞっ!じっちゃん!!」
小さな握り拳を作って、梛之介は松左衛門へ抗議する。
「ひょっひょっひょっ!
お前は騙されやすいからのぉ…
儂は心配じゃ…
誘拐でもされて、身代金要求されても払えんぞ?」
孫が気掛かりでならないのだろう。
松左衛門は冗談を言いながらも、梛之介を宝物の様に優しく撫でる。
「じっちゃん……」
暖かいヨボヨボの手は、梛之介の短い足を躊躇させる。
「こりゃっ!男がすぐ泣くでない!!」
容赦ないじじいの拳骨が、孫の頭に落とされた。
「~っ!じっちゃんの、じっちゃんのぉ…」
「なんじゃい泣き虫」
「バッカやろおおおぉぉぉぉ!!」
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