第一章 その1“なぎのすけ”

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してやったりと、ニンマリ笑う松左衛門の目に涙など無い。 梛之介は沢山の涙を溜めたまま、目を見開いた。 「じっちゃん…オレをダマしたのか……!?」 呆気に取られた梛之介は、鼻水まで垂らしそうな寸前だ。 「騙されるお前が悪いんじゃ」 どこか楽しそうな口調だ。 「ひでぇぞっ!じっちゃん!!」 小さな握り拳を作って、梛之介は松左衛門へ抗議する。 「ひょっひょっひょっ! お前は騙されやすいからのぉ… 儂は心配じゃ… 誘拐でもされて、身代金要求されても払えんぞ?」 孫が気掛かりでならないのだろう。 松左衛門は冗談を言いながらも、梛之介を宝物の様に優しく撫でる。 「じっちゃん……」 暖かいヨボヨボの手は、梛之介の短い足を躊躇させる。 「こりゃっ!男がすぐ泣くでない!!」 容赦ないじじいの拳骨が、孫の頭に落とされた。 「~っ!じっちゃんの、じっちゃんのぉ…」 「なんじゃい泣き虫」 「バッカやろおおおぉぉぉぉ!!」
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