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涙を風に靡かせながら、梛之介は門の外へと一目散に走って行った。
「行ってきますも言わんとは…仕方ないヤツじゃのぉ」
見上げる空は、どこまでも青く、老人の目の端には光る物があった。
着物の袖からティッシュを出すと、耳がキ―ンとなるくらい思い切り鼻をかむ。
「歳を取ると、涙もろくなるわい。
綾蘭、おるかの?」
独り言を呟く様に、梛之介の見えない背中を見送る。
「ふざけずに送り出せばいいのに…
じい様はいつも梛様をからかう」
音も無く、松左衛門の隣に若い女が立った。
名を篁 綾蘭<タカムラ リョウラン>という。
篁家特有の濡れ羽色の髪と瞳の剣士だ。
「綾蘭、孫を…我等が主様の子を頼んだぞ」
「分かっている」
そよ風が吹く間、二人は沈黙する。
無言のまま、松左衛門は懐の手紙を綾蘭へ渡した。
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