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「…遺言書か?」
白い封筒を見ての感想を漏らすと、松左衛門が唾を飛ばして否定した。
「何が遺言書じゃ!まだまだくたばってたまるか!!」
この御年134歳の老人が、三途の川を渡る日は何時になるのか。
(私はじい様の葬式には出れないだろうな)
綾蘭は逆に、松左衛門が自分の位牌に合掌している姿が目に浮かんだ。
「それは梛之介がホームシックになったら渡してやってくれ」
松左衛門は肩を落として門に背を向ける。
その背中は小さく、一気に年老いて感じた。
「じい様…死ぬなよ」
「わしゃ死なん!!」
老人の叫び声に、桜の木で休んでいた鳥達が一斉に飛び立った。
それをぼうっと眺めて、思い出した様に振り返る。
「綾蘭!」
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