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鈴を転がすような軽やかな声が思いがけずすぐ近くから発せられ、少女はビクッと身を震わせた。
「っ! ――だ、だれ……!?」
『あら、驚かせちゃったかしら? ごめんなさいね』
再び楽しげな声が響き、少女が声のした方へ、右側へと顔を向けると、
「――へ?」
そこには、あるひとつの「もの」があった。
一言でいうと、木製の箱。
余計な装飾の一切ない、少女の両手に収まるサイズ。
少女も一度は目にしたことがある、それは。
「……おる、ごーる?」
少女がぽかんとした様子で呟く。
オルゴール。
しかし、それは明らかに普通のオルゴールではなかった。
音楽を奏でるために必要な、ネジがなかった。
そんな、人間の言葉を話す謎のオルゴールはくすりと笑って言った。
『はじめまして、私は“黒ねこ”。よろしくね、歌姫さん』
これが、少女とオルゴールの出会いだった。
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