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「アーシェちゃん……。
もういいかな」
町の男性が私の肩に手を置いた。
「悲しいのはわかるが泣いても何も変わらないよ」
「じぇも〔でも〕……」
泣いているせいで上手く声が出せない。
だが、次に彼の言った言葉は私を黙らせた。
「俺もたった今妻を亡くしたんだ」
「えっ?……」
「流れ弾が心臓を……」
「…………」
私はなんて言えばいいのかわからなくなった。
(なんで、なんでこうなるの?)
私は顔を手で覆って涙を堪えた。
「だから、俺達もつらい。だけど、泣けば敵に見つかるかも…………」
彼の言葉はそこで途絶えた。
パンッ!!
渇いた効果音。
私は手を下ろし、彼を振り返る。
「うぐっ!」
「ひゃっ!!」
ドサッ!
私が声を上げた時には彼は絶命していた。
「あ、ぁわ……ぁぁ」
私は恐る恐る前方へまた視野を戻した。
私の頭はパニック状態だった。
自分の顔と腕についた殺された彼の血が私の頭の中まで赤黒く染めた。
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