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真っ暗な箱の中
私はあなたの帰りをひとり待つ
それは何だかもういつになるかなんて見当も付かず、
気配のないしんとした世界で私は只目をじっと開けている
がちゃり
金属的なアパートの扉が開く音
眠たそうなゆっくりとした靴の落とし方
「おかえり。」
「あ、まだ起きてたんだ、寝てて良かったのに」
「うん、でも待ってたかったから」
「…ふふ、可愛い事言ってくれんじゃん」
ゆっくりと私を抱きしめる体からは
あなたのセブンスターの匂いでもなく、私のアナスイの匂いでもない甘い甘い匂い
その甘ったるい匂いは妖艶で私を引きつけて離さない、気持ち悪い
ほら、ベタだけどシャツに口紅だって付いている
それなのにあなたはよくも飄々と「愛してる」なんて言葉を
「ご飯、食べる?」
「んーその前にさ」
「?」
どさりと音がした。
それは丁度私の体に起こっていた事で、身動きが取れない
「え、ちょ、」
「お前をね」
「ば、か、何言って…ん!」
貪る様な唇が私を黙らせ、そのまま情事に走るあなたは狼の様で
感情もろとも喰らい尽くしてしまう
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