黒ウサギの少年

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その日は満月だった。 雲一つない、星が瞬く夏の夜空。 そんな夜空を家の窓から眺めていたのは真山月子だった。 真山月子は14歳の中学生。部活はパソコン部で趣味はポケモン。 成績普通。中肉中背。茶のかかった髪を長く伸ばしている。 今日は夏休みで、両親は旅行に出かけていていなかった。 月子はインドア派なので、両親の登山ツアーにはついて行きたくなかったのだ。 もしも行き先がポケモンセンターなら是非ともついて行ったが、両親に限ってそれはあり得なかった。 仕方なく月子は一人寂しく家に残り、イーブイを孵化していたのだった。 月子が外を眺めたのは、孵化作業に疲れたので気分転換をしようと思ったからだった。 しかし思っていたより綺麗な景色だったので月子は思わず見とれていた。 「・・・満月・・・か」 普段景色など気にしない月子だったが、その時はたまたま綺麗な景色だったのだ。 満月は丸かった。普段空をあまり見上げないからなのか、月子は満月をあまり見たことがない。 一応、月子という名前は彼女が生まれた日に目が覚めるような美しい満月が輝いていたということで付けられたのだが、月子は大して満月と縁のない子供に育った。
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