同窓会

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 一昔前を思わすような田舎町  同じ時代を流れながらも どこかに過去を引きずっている  どうしてもこの町が好きになれないのは そんな姿が私に似ているからかもしれない  私の名前は松田陽子  田畑の続くこの町の一角に 私のアパートはあった  私のというよりは 私と夫との新居なのだが 37歳にして新婚生活を送ることになるとは 夢にも思わなかった  「ねえ これどうかな?」  「いいんじゃない」  「なにそれーちゃんと見てよ」  「陽子は何着ても可愛いよ 大丈夫だって」  そんな素っ気ない彼の言葉も 今の私には宝物  何にもないこの町が少しだけ輝いて見えたのは 彼がいたからだろう  今日は私の小学校の時の同窓会  今日の為に頑張ったダイエットも あまり効果のないまま迎えることになった  「本当にお店まで 送って行かなくていいのか?」  「うん 電車で行けるからいいよ」  「じゃあ 駅まで送って行くから」  歩いてでも行ける駅なのに 彼は車で送ってくれる  そんな優しい彼だからこそ 私は共に歩くことを決めたのだ
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