同窓会

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 アパートの前の小道を東へ行くと 駅が見えてくる  この町の寂れた無人の駅は 置き忘れた何かを思い出させるように佇んでいる  過去と今とを繋ぐように 変わらない姿で語りかけてくるのだ 車を降り 送ってくれた彼に手振ると 彼は嬉しそうに手を振って帰っていった  ふと足元を見ると 駅の端のコンクリートの隙間から 一輪のたんぽぽが静かに風に揺れていた  「雑草だけど 黄色い可愛らしい花  しっかりと根を張って 踏まれても踏まれても 力強く生きている  たんぽぽを見ると陽子を思い出すよ」  昔好きだった彼が そう言っていたのをふと思い出した  たんぽぽか・・私らしいかも  辛くても悲しくても 必死に笑顔で咲いていれば きっと誰かが気付いてくれる  そうやってずっと生きてきた  でもそれは人前で弱い自分を見せられない私の ただの強がりなのかもしれない  電車に揺られて着いた先には 住み慣れた街が広がっていた  もちろん昔とはお店も街並みも変わってしまったが この街の空気はあの時のまま  街の明かりも雑踏も 寂しがりやな私を優しく迎えてくれる  常に新しい何かが溢れているこの場所は 明るい未来と繋がっている気がするのだ  私はいつも前だけを見ていたいから この街が好きなのかもしれない  それでもこの街は私の昔と繋がっている  今だからこそ笑って話せる私の過去の傷も この街と共に今もなお息ついているのだ
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